先生はなぜ必要ないのか、を知らない人へ。
私は小中学生向けにシェア工房を運営しています。場所だけ開放できたら楽なのですが、なかなかそうもいかず、こどもたちから見たら先生的な立場です。実際には先生なんてレベルではなく、今でも動くおもちゃ系工作は得意じゃない。 ただ思うところあって来週モーター工作ワークショップに初挑戦します。 しかもオンライン講座も同時とか我ながら無謀。
こどもの頃はひみつ基地とレゴに勤しみ、大人になってからは建築設計を生業にモノを動かないようにすることを考えてきたのに、今更動くものを作るなんて自分にできるんだろうか?と40歳から始めたので、いまだに苦手意識しかないけど、逆にこどもたちと同じ好奇心レベルで工作ができるのが強みとばかりに、こども目線の動くおもちゃ工作を試してきた。
あれこれもがいているうちに、先生として教えることができない私だからこそできる、ワークショップの価値が分かってきました。
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きっかけは工房にやってくる男の子がおもちゃ工作をやりたがり、そして軒並み一人では作れなかったこと。
基本うちの工房はじゆう工作なので、自分でやることを決め、さらに本やネットで探して自分で作らなくちゃいけない。
公教育に飼いならされた子には、ハナからかなりレベルが高いです。
動く系の工作の場合、例えば棒を一つ刺すにしても、完全に固定しなくてはいけない時と、抵抗なくクルクルと回るようにしなくてはいけない場合があったりする。
大人だと全体の機構をみて、動きを予測し、「ここは固定したほうがいい」「ここはクルクル回ったほうがいい」と理解できるものが、小学生には難しい。マニュアルを理解する国語力と工作の経験量、指先の器用さに諦めない忍耐力が必要・・・となるとそんなに簡単ではない。特に歳が上がるほどプライドが高くなる傾向にあり、2時間何もできずにフリーズして終わることもある。
それは可哀想とタミヤ のギアボックスのキット(自分で組み立てるやつ)をいきなり与えると、だいたい以下の結果に落ち着く。
●「わからない」「できない」ことは大人が手伝わなくちゃいけない→ほぼ大人が作るハメになって意味なくない?
●大人が手伝っている間に暇になって別の工作を始め、すっかり興味を無くしてしまう。→私はナニモノ?な気分になる。
●部品が小さくてこどもが失くすと即アウト→アウトになったことを理解せずダダをこねる。
面倒なことこの上ありません。放っておく、という選択もあるけど、失敗だけの経験だと工作嫌になってしまうので、技術力がなくても作る方法ないの?と考え始めました。
こども自身で完成させることができて、パーツが大きくて、緻密な設計いらず、失敗しても材料の代わりがたくさんある。こんな方法で動くおもちゃって作れないのかな?と考えたときに「100円ロボット部」という面白そうな活動を見つけた。
ここでは目がついてれば全てロボットとして認めてもらえた。目玉を貼った布を人力で動かしてもロボットと言い張る。そうか、ひとまず言い張ればいいんだ・・・目からウロコでした。
しかしそんなことでは納得できない男子たち。しかけで動かないロボットには全く興味を示さない。ああ、自分でできもしないのに口は達者だなんて・・・困ったなあ。
その時に神のように現れたのが「DCモーター」。100均のグッズの中にあったり、使えなくなった家電を分解したら出てきたり、理科の実験で1回使ったきりで家に放置されているやつ。
電池を繋げると軸が高速回転する。
これがもう、男子のハートを鷲掴みなんですよ。
いやあ単純でいいねですね〜!
なーんだ、モーター1個あればずっと遊べるんじゃない?と、100円ロボット部で教えてもらったり、こどもたちと工作したりして、楽しむコツが少しづつ分かってきました。
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つまり何が言いたいかというと、
やりたい気持ちが十分にある子は、好奇心をくすぐるものを渡しておけば、失敗を怖がらず、人の目を気にせず、人をバカにせず、教えあいすぐに人の真似をして何か生み出していく。
その大切さを、ロケット開発してる植松さんのブログが100%表してくれていて、素晴らしすぎるので引用させていただきます。
(以下ブログより転載)
僕は、見学に来てくれた子達に、最後に話します。
お願いだから、大人の昔の常識なんかに負けないで。
大人が「無理だ」「難しい」というのを信じないで。
必ず、自分で試して確認して。
そして、お願いだから、大人の顔色をうかがって人生を決めないで。
みんなの人生はみんなのものだからね。
大好きなことを増やして、やってみたいことをどんどんしゃべって、
仲間を増やして、夢をどんどん実現していくんだよ。
言われたことを、言われたとおりにやっていたら、
年功序列で給料が増えた時代は、とっくに終わったんですってばよ。
てことに、気がついていない大人のいかに多いことか・・・。
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できたものはあちこちノリがはみ出してたりバランス悪くて不格好だったりするんだけど、立派な作品を作ることなんてどーでもいいことで、 一番の目的は、上手に作ることじゃなくてこの感覚を忘れないで大人になって、どんどんやっちゃう精神で日本を乗り越えていける人になってくれたら、安心して死ねるなと本気で思っているのです。
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最後に、そんなやっちゃう精神で作ってきて、この春こどもDIY部を卒業する子達の作品をみてください。
モーターで動く観覧車。特に工作本を見ずに構造を考えながら作って完成しました。
タバコの箱よりひとまわり小さいミニチュアトランク。革張りです。細かいところまで手縫いで仕上げました。
卒業生の成長を見て、心の底から先生はいなくても子は育つと教えてもらいました。
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