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親子でちょこっと離島で暮らしてみた話。

「うちの息子このままで大丈夫なんだろうか?」

母親なら誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか? 異性の心の中は本当に分からないことだらけ。上の女の子3人の子育ての時には感じなかった不安がフツフツと湧いてきた2021年。2021年最後の1か月に息子と3番目の娘と3人で離島に1か月暮らした日々に思ったことの記録です。(最後の1週間沖縄に行ったので沖永良部島は3週間)


「うちの息子このままで大丈夫なんだろうか?」と思ったきっかけというのが、彼の笑顔が少なくなったことに気づいたから。

勉強できない、運動できない、特技もない、「リアルのび太」ばりの呑気な彼の取り柄は「笑顔」。その笑顔を褒められ失敗してもポジティブに生きてきた。

ところが小学校に入り、みんなと同じようにできなかったり、いじめられたりですっかり臆病になってしまった。「どうせできない」とやる前から諦めるようになり、好奇心の発動も減ってきた。

そんなときに、2年ほど前にクラファンした離島への島留学体験のリターンを行使する時期が来たので、これはいい機会とばかりに行ってきたわけです。

ちなみにクラファンしたきっかけは、自然や生き物が好きな娘3が学校に行けなくなったから。少しの間環境を変えてあげたいという思いだったのですが、コロナ下で気が付けば彼女は1年間の不登校を経て、折り合いをつけながら今は学校に行っています。女の子の葛藤はなんとなく想像がつくので安心して(?)見ていられるのに、男心はやっぱりさっぱり(汗)


1. 何もできない息子と何もできない私

訪れたのは鹿児島県奄美諸島の南のほうにある「沖永良部島」。人口約12000人、人口密度は今住んでいる東京の町の1/100以下。おもな産業は意外にも漁業ではなく農業。 観光地化されていないこの島での1か月をアテンドしてくれたのは「えらぶ手帖」の皆様。

2021年4月から第1期島留学がスタートしていて、2家族が本土から1年間移住し、地元の公立小学校に通っていました。私たちはその様子を垣間見ながらちょっと体験させてもらった次第です。


私たちが滞在したのは島の西側の屋子母海岸近くのコテージ。窓からは太平洋の水平線に沈む夕日を拝めるロケーション。天気が良ければ隣の与論島がうっすら。毎日釣りをするぞ!とテンション上がる子ども達と1か月の暮らしがスタートしました。


実は車の運転ができない私。

このコテージは町から離れているので、買い物には小一時間歩かなくてはいけない。たった1か月なので子どもたちは学校へも行かない。外を歩いてもサトウキビ畑と海しかない。人にもほとんど会わない。せめて魚くらい釣れたら…と思ったけど残念ながら1匹も釣れない(涙)


勉強も運動もできない息子をみて不安になっていた私の方こそ、この島では何もできない無力な人間だったことに早々に気づかされました。

この後に出会う農家さん、自然探検ツアーのガイドさん、コテージのオーナーさん、お土産物の企画販売をしている方、昔ながらのてづくり黒糖をつくる工場の方、月桃での草木染を教えてくれた方、サトウキビの収穫体験をさせてくれた方などなど、島に住んでいる人と話をするごとに「わたしはこの島では何もできない」という感覚が強くなっていきました。

息子のこと とやかく言ってる場合じゃないぞ、私。

「大自然あふれたこの島で生きるためには、ひとつの方法に頼って生きるのは危険なんですよ

というだけあって、皆さん持っているスキルを駆使して季節ごとに、シーンごとにいろんな仕事をしている。 離島に行くっていうのでゆるふわ田舎暮らしをイメージしていたけど、「ゆる」も「ふわ」もどこにもない

休みなく朝から晩まで働いている感じ。自営業の方が多く、時間に融通がきくようで、地域の行事やPTAの活動も活発らしい。みんな働き者。

息子が将来勉強できなかったら農家とか漁師とかいろんな選択肢があるよ・・・なんて思ってたけど別次元のスキルが必要だ、甘くない。

さてこんな何もできない私ですが、何もないところから楽しみを見つけるのは得意なので、振り返るとなんだか忙しく過ごすことができました。

釣れない釣りをする。海の干満と月関係を自分の目でチェックする。毎日海に散歩にいく。貝やシーグラスを集める。軽石がたくさん~!と驚く。レンタル自転車でふらふらする。いつもどこかの隙間から入ってくるアリ君と戦う。ヤギを探して会いに行く。道に落ちていたサトウキビから砂糖をつくる。マイクラに出てきそうな景色を探す。海水から塩をつくる。道端に生えているパパイヤやミカンを取りに行く。コテージの犬と散歩に行く。暖かい日は海であそぶ。砂糖と塩の歴史の本を読む。サンゴが隆起してできたこの島がなぜ畑向きの赤土なのかを調べる。コテージにある漫画を読む。雲がなければ満点の星空を見に行く。初めて見た食材を調理してみる。近所の公園でボール遊びをする。東京の小学校とオンラインでおしゃべりする。海の生き物を探す。ウミガメのことを考えながらビーチクリーンをする。持ってきた仕事もする。

どれもこれも小さな遊びなんだけど、ほとんどが東京ではできないことだったのがとても良かった。




2.学校のこと

結局現地の小学校には全く行けなかったのであまり参考にならないのですが、聞きかじったことと個人的な感想。

島のこどもたち元気でいい!

東京で出会うはじめましての子の場合、声をかけても返事がなかったり、恥ずかしかったりよそよそしかったり。慣れるまでに2時間かかるとか普通なんです。島で会った子たちは「こんにちは!」と声をかけると「こんにちは!ところで誰?」と元気に返してくる。ズンズンくる。「小さな大人」ではなく、良い意味で「昔ながらのこども」って感じ。挨拶を元気にできるというのは、自分のことを値踏みされない安心感があるからなんでしょうね。

小学校はどこも小規模校で、目が行き届いて手厚いケアを受けられるのが良いと島留学を希望する家族もいるのだとか。東京だと私立校やオルタナティブスクールに行ったりとお金のかかる選択肢にならざるを得ないことを考えると大きな魅力。

一方で島留学に来ている方に聞くと小学校生活はかなり忙しく、土日の休みはぐったりしてしまうらしい。宿題も多く、部活動のようなものもある。学校外の活動や家族との時間を重視し、宿題も殆どない東京の学校との大きな違いでした。


3.沖永良部だからできること

「沖永良部に行ったら洞窟探検(ケイビング)やりたい!」とワクワクしていた私。娘3も「マイクラみたい。やりたい」と乗り気なのに対し、息子は「絶対に行きたくない!」という状態のまま沖永良部入り。どうやら息子は水に入るのが嫌いらしい。いやあ、ここまで嫌いだとは知らなかった。

ケイビングの日まで、あれやこれやと彼に自信を持たせる作戦を決行。 なだめすかして、ちょっと頑張れば達成できるミッションを与えてみたり、高所恐怖症の私を助ける役割を与えたり、水のない洞窟探検に連れて行ってもらったり。息子頑張ったし、自信がついたように見える。

そしていよいよ迎えた当日の息子がこちら。


途中まで来たのだけど、やっぱり怖くて動かなくなったので 、仕方なく笑顔でひきずるようにして連行するの図。





ここが洞窟の入り口。小さくて真っ暗で最初は狭くて急傾斜を下っていきます。ここを抜けると地下に流れる川に到着。地盤がサンゴ(石灰岩)なので軟かく、ほとんど川のない沖永良部島の水源はこの地下の水、水道水はなんと硬水なんです。

さてこの傾斜を下りると進むしか選択肢のない息子は、足首くらいまでの水の中はなんとか大丈夫だったものの、腰くらいになるとやはり怖いらしく「帰る」という。真っ暗な中一人でこの道を帰れるわけないことはすぐに理解してイヤイヤ進んでいくうちにそんなに怖くない、ということが分かってきたのか、表情も和らいでいきました。 一番水深が深いところでこれくらい。(身長約137センチ)

一番狭いところがこんなかんじ。ぽっちゃりな私は挟まりそうでドキドキ。

この狭いところを抜けると目的地「リムストーン」という鍾乳石の棚田状の水たまりを見ることができます。


何万年もの時間を経てできた鍾乳石の森、暗闇、水の音、地球の内側にいる感覚は、自分のちっぽけさを感じるに良い時間でした。



4. 急遽沖縄へ。

沖縄にいる昔の仕事仲間に連絡したらちょうど都合があったので最後の一週間は沖縄へ行くことに。沖永良部島からフェリーで5時間強。旅立ちの日の海は大荒れでしたがなんとか予定通り沖縄・本部港へ到着しました。

電話をすればタクシーが迎えに来てくれ、久しぶりにローソンを見て、沖縄の都会っぷりに大喜びのこども達。

一方で私はお金がないと何もできない寂しさを感じていました。

沖永良部で会えなかったウミガメには、沖縄でお金を払えば会えたけどなんか違う。 毎日工夫して遊んでたのをそのまま引き継げばいいのになぜかできない。観光地の良さと寂しさ、都会の便利さありがたさ、与えられる側になる虚しさ、などなどがじわり。


5. 東京に戻ってから


東京に戻ってからはほぼ以前の生活に戻りましたが、息子も娘3も笑顔が増えました。(そのまま冬休みだったので、学校に行ってないからかもしれないけど)

息子が突然「スキーやってみたい」とか「次に島に行くときはシュノーケリングやってみる」と話す姿を見て嬉しくなっていたりします。今の一時的な感情かもしれないけど、ちょっと頑張ったらできたよね、という体験にはなったよね。

私はというと、どこででも生きていけるスキルを身につけるべく、2022年は今の仕事に丁寧に取り組むことと、新しい勉強をはじめようと企んでいます。次に島に行くときには、向こうで何かできるようになっていたいなと思いながら。





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